全部の作詞と作曲:長谷川都
2005.02.16 released 3BCD-2001 ¥1,050(tax in)
amazon長谷川都という、ひとつのコップがあったとしたら、
「満ちてゆく」は、そのコップに液体が注がれた状態の歌で、
「こころの声」は、コップの中身が空の、そのままの状態の歌だ。
彼女は「こころの声」という歌で、
自分はそんなに強くないし、いい子なんかじゃないと歌う。
過去の癒えない傷だってあるし、新たな悲しみだってある。
日々迷ったり、怒ったり、泣いたりして生きているんだと。
完璧な人間なんていないんだから、それは当たり前のことだ。
けれど、彼女は良くも悪くもとても真面目な人間。
自分の弱い面を見せまいと、気丈に振る舞うところがある。
でもやっぱり、怖いんだよね。
自分の弱さを感じるときに同時に感じる得体の知れない恐怖感。
それがまた、怖くて怖くて仕方がない。
そんなむき出しの「こころの声」という心を、
彼女は、バックの跳ねるリズムと一緒に、激しく、叫ぶように歌う。
ただ、その不安定な彼女の心を安らかな状態へと導いてくれる人がいる。
それは“あなた”という唯一無二の存在。
「大事なものはひとつじゃない/両手に抱えきれない/
けれど何より大事なんだ/あなたと出逢えたこと」
迷ったり怒ったり悲しんだりして流した彼女の涙を“あなた”がすくいとり、
“あなた”しか注げない愛情という液体に変えて、空のコップに注いでいく。
そうして長谷川都は、じんわりと「満ちてゆく」。
「満ちてゆく/こころの声」とは、そんな彼女の心の満ち欠けを表した2曲だ。
最後に、
シングルのジャケットに写った彼女の笑顔に私はしばし釘付けになった。
その笑顔は、ただ笑っているのではない、
凛とした意志を宿す力強い目を持った、確かな笑顔だったから。
顔は心を映す鏡。
そしてシングルのタイトルは「満ちてゆく/こころの声」。
彼女は今きっと、満たされて生かされている。
ライター 山田愛